山田サトシ

丹生川を見つめる山田さん

清流と木彫職人の地で

醒ヶ井駅から車で5分程の所にある静かな集落「上丹生」。ここもまた、びわ湖の素となる丹生川が里の中心を流れる清流の里。川を隔てて民家が連なり、何本もの橋が川をまたいでいる景観が印象的だ。里の入り口から川を遡るように進むと、川の音だけが聞こえ静かな谷あいに入ってゆく。ここは昔から仏壇づくりの里として知られ、全国でも精鋭の木彫職人や生地師たちが暮らす秘境の地。一心に木を彫るに相応しい、研ぎ澄まされた空気が漂っている。山田さんは里の奥に鎮座する神明神社のすぐそばで生まれ育った。

イラストを描く山田さん

リラックスできる家で描く

山田さんは新進気鋭のイラストレーター。高校を卒業してサラリーマン生活を送る中、趣味で描いていたイラストの仕事が舞い込むようになり、そのまま本業となったという。現在、独立して7年半になるそうだ。家の玄関を入るとすぐに、ご自身が描かれた龍と猫の墨絵が飾られている。龍が好きだという山田さん。水の神と言われる龍。屋内にも川のせせらぎが聞こえ、猫が挨拶に出てきてくれた。部屋に入ると日本人形や、各地の民芸品、床の間にはパワーストーンなどが飾られていた。旅が好きで、旅先ではじめて出会うものを描くことで、新たなインスピレーションを得るという。旅先の記念品が大切に飾られた家で、静かに、そして真摯にイラスト制作と向き合っている。

イラストを描く山田さん

環境に育まれた美的センス

絵が好きなのは、もの心つく前から。気がつくと襖いっぱいに絵を描いていたという。普通なら怒られそうなものだが、あまりの上手さに怒られもしなかったという。理解ある両親のもと、幼少期から仏壇が身近にあり、職人技を間近で見て育ったという。本人も気づかないほど自然に、仏壇にあるデザインの要素が、作品の端々に受け継がれているのが見受けられる。上丹生の風土と伝統技術が育んだ、新たな感性と才能といえるだろう。

山田さんが手がけたイラストたち

スタイリッシュでセクシーな表現

山田さんの仕事は、結婚式のウェルカムボードや、店舗、チームのロゴデザインを手がけることが多いそうだ。スタイリッシュでセクシーな作風で、人気イラストレーターとして注目されている。パソコンさえあれば仕事ができるため、米原で仕事をする事に何も不自由を感じず、むしろ居心地が良いという。集中すると12時間以上も没頭して描くそうだ。霊仙山の山あい、せせらぎだけが響く静寂の中、内から湧き出るイメージをペン先に伝えるにはもってこいの環境かもしれない。

取材を受ける山田さん

山田サトシ × 米原市

2021年3月、米原駅東西自由通路で、山田さんがデザインした米原市ゆかりの人物や名所をテーマにしたイラストの企画展が開催される。戦国武将の石田三成や京極高次など、どの作品も人物の逸話をもとにすぐにビジュアルイメージが浮かんだという。イラストをよく見ると、人物にまつわるエピソードが表現され、そこから歴史を紐解いていくのも面白い。地元で展示するのはこれが初めてという山田さん。これからは、もっと地元に貢献していきたいと語ってくれた。