リノベ事例紹介① 切り絵作家・早川さんのお家

芝生の中庭でプール遊びをする娘さん

「大草原の小さな家」に憧れて

早川さんは、ご夫婦と小学生の娘さんよるご家族。娘さんが小学校に通うタイミングで引越しされた。ご主人は切り絵作家さんで、アトリエを兼ねたご自宅で制作活動をされている。広い芝生の庭を囲むようにゾーニングされた早川さんの家、表通りからは想像もつかない開放感に心がときめいた。小さい頃に大好きでよく見ていたという「大草原の小さな家」に少しずつ近づいているのかもしれない。

広い裏庭で遊ぶ早川さん親子

家探しには、明確な条件を

芝生の中庭で遊ぶ娘さんと愛犬

娘さんの小学校入学にタイミングを合わせて引越しをしようと考えた早川さん一家、引越しする前も同じ米原市の山間の集落に住んでいた。引越しにあたって、求める物件の条件は明確だった。娘さんの通学環境のこと、奥さんの仕事場までのアクセスのこと、ご自身の仕事場がプライベート空間と分けられることだった。別の物件を検討していた時、友人からの紹介で空き家になる予定の物件を一緒に見に行った。自分たちの暮らしが想像できた。そして、ほぼ即決。「条件を明確に決めていたので、それほど悩むこともなかったです」と早川さん。

無理せず、自分のペースで進める

家は20年前にリフォームされていたらしく、すぐに住める状態だった。そのため、オリジナルを活かしつつ、必要な設備のリニューアルと主にアトリエスペースの改修を行なった。設備や電気工事の他、仕事場のトイレとプライベートスペースのクロス張りは業者に頼み、アトリエスペース、車庫、物置小屋をDIYで改修した。仕事をしながら、自分でボチボチ改修を進めて約半年で完了した。まだまだ手を入れたいところはあるらしいが、とても素敵な空間になっている。

リノベしたアトリエで仕事をする早川さん

自分の信念に従って

早川さんのワークスペース

仕事場の玄関を入って直ぐに目に止まるのは、床間の切り絵作品と、その隣にあるお仏壇。早川さんによると、閉眼供養を終えた後、前の住人さんが処分される予定だったが、捨てないで欲しいと伝えたそうだ。「分野は違うけど、同じモノづくりをする人として、どのような類のものであれ、美しい作品は捨てたくないと思った。」という。一般的にはとても珍しいが、仏壇と早川さんの作品が並ぶ空間は、絶妙に相性が良くて温かい気持ちにさせてくれる。

こだわりを突き詰める

アトリエスペースは、床を黒のタイルカーペット敷きにした。フローリングだと切り絵の制作時に切りくずが隙間に挟まり掃除が大変になった経験からだった。床が落ち着いた色になると、空間全体が引き締まってワークスペースらしくなった。アトリエデスクも市販のものではなく、自分でDIYした。一日の多くの時間を過ごし、精細な切り絵をする大切な場所、少しでもストレスがないようにサイズや機能性など使い勝手を追求した。傍にはゴミ箱を収納できるスペースをつくり、切りくずをそのまま捨てることができるようにした。ちなみに後付けだが、ゴミ箱を取れば子どもの宿題机にもなるようだ。親子でワークできる机になった。

早川さんのワークスペース

難敵の登場

作業途中のアトリエスペースの土壁

一方で、難しかったのはアトリエの土壁の色。ベンガラと呼ばれる赤褐色の柱との相性に頭を悩ませた。白だとコントラストが高くなり長時間過ごす空間では疲れるので、最終的にはグレーをチョイス。馴染みも良く気に入っている様子。ちなみに、米原市の古民家の多くは防虫・防腐のため柱にベンガラが塗られていることが多い。ベンガラとグレー壁との相性がとても素敵だったので、今後リノベーションを考えている人は是非候補に入れてほしい。

素敵な車には、素敵な車庫を

車庫は、扉を新しくDIYで作り直した。車の雰囲気にもマッチして、とてもかっこ良くなった。さらに、ソーラーパネルを設置した照明で機能性も格段にアップした。物置小屋は、屋根を直して、その機能を取り戻した。まだまだ手を入れたい箇所があるようでウズウズしているように見える早川さん。「今後もさらに気持ち良く住めるように少しずつ手を入れていきたいと話してくれた。

リノベした早川さんの車庫

まずは、お試し期間を設けてみる

リノベーションについて話す早川さん

これからDIYで家づくりをしたいと考えている人にアドバイスをもらった。「許されるなら、まずは好きに改修させてもらえる家を賃貸で借りて、お試しでリノベーションしてみることをおすすめしたいです。少しずつ技量を高められるし、自分にとって大切なものとそうじゃないものが見えてくるので。」と早川さん。さらに、「部屋の模様替えの延長線のような気軽な気分で楽しむことが大切で、できるようになると欲が出て、より良くしたくなる。その繰り返しが自分らしい家づくりになるように思います。」とのこと。自分のペースで進める家づくり、簡単なところから始めてみたくなった。

切り絵作家・早川鉄兵さん

切り絵作家・早川鉄兵さん

プロフィール
1982年、石川県金沢市生まれ。 小さいころに、母親と一緒に切り紙遊びをしたことをきっかけに切り絵を始める。滋賀県、伊吹山の麓を拠点に、日々出逢う自然や野生動物の姿を伸びやかに描く。精密な切り絵作品にとどまらず、大掛かりなインスタレーションやライトアップを手がけるなど、新しい切り絵表現の可能性を模索している。
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文/写真

びわ湖の素編集部

びわ湖の素編集部は、ディレクター/デザイナー/カメラマン/ライターなどで構成されるクリエイティブチーム。自分たちが楽しいと感じ、人に伝えたいと感じることを大切にして、米原の魅力を発見し、体験し、発信しています。また、一緒に編集してくれる仲間を随時募集しています。