宮川大

宮川木工所の宮川さんと吉田さん

一日で15分生みだす家具づくり

飾りっ気がなく、とても正直な人だと思った。
職人さん特有のそれではなく、質問にきちんと答えようと言葉を選んでの間は、朴訥とした宮川さんの人柄を表している。

宮川大さんは生まれ育った大清水で木工所をしている。お客さんの要望に合わせた木工家具をスタッフの吉田さんと2人でつくっている。人柄そのままに、使いやすさを一番に考えたシンプルな家具たち。目指すのは、生活する人の時間を奪わない家具。使い勝手を高めて、1日15分の時間を生みだす家具を作っている。杖の代わりにカンナを持った魔法使いなのだ。

宮川木工所の作業風景

キッカケは些細なこと

地元の高校を卒業後、障害者の更生支援施設で働いていた宮川さん、仕事が休みの日に何気なく作ったテレビ台がきっかけで木工を志すことになった。テレビ台を見た友達から次々に作って欲しいと頼まれた。元々モノづくりが好きだったことも後押しし、真剣に木工家具を学びたい想いが強くなった。そして、22歳から2年間、飛騨にある学校で学んだ。

学校での2年間は、とても楽しかったという。技術が足りなくて友達の要望に応えられなかった過去の自分に少しずつ力がついてくることを実感できたようだ。2年目には、北欧家具ブームが巻き起こり、木工家具の新しい扉が開いたように感じた。同じ雪深い北欧と米原、冬でも気分が軽くなる家具にリンクしたのかもしれない。

宮川木工所の作業場

人との出会いに委ねる

学校を卒業後は、神戸、彦根の木工所で働き、10年前に地元大清水で独立開業した。そこからの10年どんな苦労や苦難があったのだろうと勝手に想像したが、話を聞くとそうではなかった。仕事は概ね順調だったとのこと。少し驚いたが、その答えは、宮川さんから幾度となく出てきた「人との出会いで変えてもらった。」という言葉に集約されていた。始めたての頃、軌道に乗り始めた頃、要所要所で人から教えてもらったとのことだった。最初からカッコイイ夢を描くのではなく、人と話し、その時々で自分の色を変え、求められる人になってきたのだ。

宮川木工所がつくった家具たち

名脇役な家具をつくる

工房の隣には住まいがあり、家族と一緒に暮らしている。工房と家を挟む道路ではちょうど小学生が下校していた。「家と工房が近いので、子どもも遊びにくる。自分の働く姿を子どもたちが見てくれることは良かったと思う。」と話す。そんな宮川さんの家の中には、宮川さんが自ら作った水屋や、テレビラック、テーブルなどが並び、実際に使われている。生活の中で使うことで初めて分かる発見があり、それらを次の製作の着想にしているそうだ。家事をする奥さんの動きを考えた水屋や、子供たちと同じ目線で楽しく囲めるリビングのテーブルやテレビラックなど、まずは自分たちが実際に使ってみて、次のモノづくりにフィードバックしている。

宮川さん曰く「特別なことをしている訳でも、強いデザイン志向がある訳でもない。」とのことだった。ただただ暮らす人の日常を思いながら、真面目にモノづくりをしているのだ。主役はあくまでもそこで生活する人、家具は主役を助ける脇役なのだ。宮川さんのモノづくり自体、誰かを助ける名脇役となっている。

家具づくりに使われる木材

地元の素材でつくる

そんな宮川さん、これからは地元米原の素材を使って家具づくりをしてみたいとのことだった。米原だからできる米原産の家具を是非つくってほしい。1日で15分生み出す魔法使いは、今日も人の声に真摯に向き合い、カンナを削るのだ。