米原市の伝統産業といえば近江真綿として知られている。 昔ながらの製法で今も作られている真綿は、コットン(綿)ではなく「真」の「綿」と書いて真綿(まわた)といい、シルク(絹)のことだ。
270年続く.を受け継ぐ9代目の山脇さんは、先代が倒れたのをきっかけに、サラリーマンを辞め、59歳の時に家業を継いだという。子どもの頃から真綿ができるまでの工程を間近で見て育ったので、すぐに馴染めたという。繭の品種にこだわり、より純度の高い真綿を目指し、近江真綿のブランドの向上に努めている。
創業当時、真綿は紬の織物として広まり、戦時中は軍の防寒として使われた。時代によって変化するニーズに柔軟に対応することで生き残ってきた。現在は、真綿布団を中心に、大学や研究所と協力して、医療用や化粧品の開発に力を入れているという。近いうちにAIが管理し、生産性がアップする時代が来るだろうと未来を見据えていた。
山脇さんの集落には地元の方の協力もあり、桑畑があちこちに広がっている。今後、更に拡大していくそうだ。養蚕が盛んだった頃の日本の原風景が、米原に蘇ろうとしている。
わからないことは、すぐにインターネットやYouTubeで調べているという山脇さん。伝統は常に新しいことにチャレンジしていないと衰退してしまう。時代を受け入れ、そこに伝統を生かしていくことで未来へつながっていく。米原市に養蚕を復活させ、これからも真綿の可能性を広げていきたいと話してくれた。