近江長岡大好き倶楽部会長・吉川良幸さん

取材を受ける吉川さん

近江長岡駅の昔と今

JR近江長岡駅の外観

米原駅から東海道本線上りの2駅目にあるJR近江長岡駅。伊吹山麓のセメント工場の貨物電車が行き来し、伊吹山のスキー場が賑わっていた頃、駅で働く人は50人ほどいて、周りに4軒の飲食店、バス停には登山客やスキー客が行列を成していたという。駅前で盆踊りをしたり、待合室のキヨスクの近くにあった大きなストーブを囲んで人が集っていたりと、活気ある町の玄関口だったそうだ。そこから30年、現在は無人駅になってしまい地元住民たちはみんな寂しさを感じていたという。そして今、吉川さんたち地元住民と移住者で構成される「近江長岡大好き倶楽部」によって当時の賑わいを取り戻そうとしている。

近江長岡駅カフェプロジェクト

2022年、長岡区に2組の移住者がやってきた。自給自足の暮らしを目指したいとやってきた地域起こし協力隊の石崎さんご夫妻と、都会で働きつつ白磁の食器などに絵付けするポーセラーツの教室を開きたいとやってきた山城さん。地元住民と移住者の交流会が開かれた際に、大阪まで通勤されている山城さんが「駅の待合室でコーヒーが飲めたらいいなぁ」と何気なく言ったことがきっかけとなり、近江長岡駅のカフェプロジェクトが動き出した。地域発信で駅内にカフェを作るというのはJR東海としても初めての取組みで、度重なる協議の末、待合室の一部を借りられることになった。「みんな近江長岡駅が賑わってほしいと思っていたが、移住者の3人がいなければ踏み出せなかった」と吉川さん。

カフェ・ルミエのオープン記念の写真

カフェ・ルミエのスタート

カフェ・ルミエでコーヒーを淹れるスタッフ

JR近江長岡駅を訪れると、田舎町とは思えないおしゃれなカフェが駅の待合室で出迎えてくれる。山城さん・石崎さんご夫妻プロデュースの『カフェ・ルミエ』はフレンチシャビーな装いにオーガニックコーヒーと、駅を利用するついでではなく、わざわざ訪れたくなる本格的なカフェとなっている。カフェ実現のためにクラウドファンディングなどで支援を募ったところ200人以上の方から協力が得られたそうだ。地元の大工さんの指導を受けながら、『近江長岡大好き倶楽部』のメンバーで作り上げたというから地元住民と移住者の団結力の強さが伺える。そして2024年2月に念願の『カフェ・ルミエ』がオープンした。オープン当日には地元のお年寄りから若者まで多くの人が集まり、パンとコーヒーの香りが待合室に広がった。今では週に2回(水曜・日曜)山城さんと石崎さんご夫妻がカフェを運営されている。その一角には市内の魅力を紹介する映像も流れている。

近江長岡の魅力

近江長岡といえば、なんと言ってもゲンジボタル。米原市の初夏の風物詩として昔から愛され大切に守られてきた。集落をゆったりと流れる天野川や弥高川からは伊吹山が一望でき、ホタルの観賞期間中のイベントには約7,000人もの方が訪れる。コロナ禍の影響で自粛されていた『近江長岡ほたる祭り』は2023年6月、4年ぶりに開催された。また、近くの西福寺境内では園児たちによる『ほたる太鼓』も披露された。近年は、耕作放棄地を生かして菜の花を植える活動が行われている。春になると黄色い菜の花畑と桜が咲く風景の中を新幹線やドクターイエローが走り抜ける。鉄道を撮影される方々にとって最高のロケーションとして新たな名所になりつつある。

ホタルが飛び交う天野川

移住者の方へ一言

インタビューを受ける吉川さん

近江長岡はかつてこの地域の中心地だったこともあり、今でも銀行、郵便局、診療所、歯医者などが徒歩圏内にあるため高齢者にとっても優しいまちとなっている。米原駅まで10分の近江長岡駅があるため交通の便が良く、通学・通勤もしやすい。地域とのつながりを持ちながら、自分らしく生きられる近江長岡。「近江長岡は、いろんな取り組みを地元住民と移住者が協力して行っているので、ぜひ力を貸して欲しい!」と熱く語ってくれた吉川さん。空き家も増えてきているそうなので、まずはコーヒーとまちの風情を味わいに訪れてみてはいかがですか?

インタビューを受ける吉川さん

近江長岡大好き倶楽部

概要
近江長岡地域(西山、長岡、万願寺)の3人の自治会長が発起人となり、2023年6月24日設立。2024年3月10日現在の会員は52人。主な事業内容は、カフェ・ルミエの運営などの近江長岡駅待合室活用事業、景観形成事業、ほたるを生かしたまちづくり事業など。
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文/写真

びわ湖の素編集部

びわ湖の素編集部は、ディレクター/デザイナー/カメラマン/ライターなどで構成されるクリエイティブチーム。自分たちが楽しいと感じ、人に伝えたいと感じることを大切にして、米原の魅力を発見し、体験し、発信しています。また、一緒に編集してくれる仲間を随時募集しています。