緑が生き生きと茂る森の中、方々から鳥のさえずりが聞こえる。そこに佇む木造の小さな学舎。歌声がそよぐ教室は、ひだまりのようにあたたかな空気が満ちている。黒板には季節を感じるメルヘンの世界が描かれ、教室の片隅には外の世界を小さく切り取ったネイチャーコーナーが設けられている。大人も童心に返ってワクワクする空間だ。
森の方舟はシュタイナー教育を取り入れた土曜学校。主宰で講師の真依子さんはシンガーソングライターとして音楽活動をされている。現在5歳になる娘さんの育児にシュタイナー教育を取り入れたいと勉強を始めたところ、自然の中で芸術に触れるこの教育は米原市の環境にぴったりだと思い2024年に森の方舟をはじめられた。
動物学、植物学、鉱物学など公立にはないカリキュラムがあるシュタイナー教育にとって、伊吹山は学びの宝庫。豊かな自然に恵まれた伊吹山は、野生動物や貴重な植物が生息している。学舎として借りている教育の森は野鳥が好む花や実のなる木が多く、池には天然記念物のモリアオガエルが生息している。
低学年クラスでは、伊吹山を題材に動物を助けるこびとや花の妖精が登場するオリジナルのメルヘンが語られる。低学年は想像力を養うことを大切にして、高学年に向けて徐々に地に足を付ける具体的な学びへとつながってゆくという。自然や動物、郷土への愛着が、地球環境や伊吹山の環境に意識を向ける土台となる。森の方舟はESD教育(持続可能な社会の担い手を育む教育)として地域に根ざしていきたい。と話してくれた。
森の方舟は真依子さんの母校でもある公立の春照小学校の隣にある。学校の授業の一環として生徒が訪れたり、中学生が職業体験の場として授業の準備を手伝ってくれることもあるそうだ。4年生の授業では伊吹山に生息するイヌワシをとりあげ、オリジナルソングを生徒たちと一緒に歌ったところ授業を終えたあとも歌を覚えて歌ってくれているのに感動したという。
さらに、小学校で開催された春照ふるさとフェスでは、子どもたちが主体となって伊吹山の動物や植物について発表したり、地域に伝わる祭りについて発表するなど、真依子さんと春照小学校とが手を取り合い、シビックプライド(地域に対する誇りや愛着、地域社会に貢献する意識)を育む取り組みが行われた。
春照小学校の裏手にある元みどり保育園は、真依子さんたちHALO harmonyが運営する子ども服のリユースマーケットの会場となっている。サイズアウトした子ども服を持ち込み、必要な子ども服を協力金1枚100円で持ち帰れる。会場内には伊吹山植生復元プロジェクトのグッズも並んでいる。伊吹山の土砂災害も突き詰めると地球の温暖化が原因。少しでもゴミを減らしCO2削減に貢献できるようにと地道に活動されている。地域を少しでも良くしようと取り組む姿勢を子どもに見せることが子どもを取り巻く環境になる。将来、それぞれの個性と能力を生かして社会に貢献し、その喜びを感じてほしいと語ってくれた。
澄んだ空気と水、そこに生きる動植物と人々。米原市は、それら全てが調和したひとつらなりの円と感じられる場所。その循環の輪を一緒に巡りませんか?子どもたちに自然とたわむれる環境をプレゼントしてあげたい方、シュタイナー教育に関心をお持ちの方、ぜひ森の方舟に遊びにきてください。