井上太佑さん、智子さんご夫婦

桜並木の道を走る井上ファミリー

京都から実家ごと大移動

取材を受ける井上ご夫妻

「こっちに来て十年以上経つからなぁ」と最初は照れていたが、僕らでお伝えできることがあるなら、と快く取材を受けてくれた井上さんご夫妻。結婚前、京都にご実家があるお二人の移住された経緯が面白い。ご主人の太佑さんが転職して長浜で働くことになった。その少し後、太佑さんの父親が「山の麓でゆっくり暮らしたい」「犬と一緒にのびのび暮らしたい」「米原で暮らしたい」と家族全員を説得。家族全員よいしょー!という感じで米原へ大移動。井上家の実家が、京都から米原になった。当時を振り返って「実家はどこにいくんや!?」とビックリしたと太佑さん。その後、結婚とともに智子さんも移住して井上家の米原暮らしがスタートした。

子育てしやすい米原市

移住した米原で子どもが生まれ、5年生の男の子、2年生の女の子、子ども園に通う男の子の三兄妹を育てる井上さん。移住のタイミングでは、子育てのことは全く意識していなかったようだが、今では「米原でよかった」と思えると話してくれた。「毎日の登下校だけで足腰が鍛えられるなって思います」と智子さん。「街中で車がビュンビュン走っている脇を子どもたちがキュッて小さくなりながら歩いている光景を見た時に、自分たちが暮らす米原の環境の良さを改めて感じます」と太佑さん。子どもと暮らす今だからこそ「米原に来て本当によかった」としみじみ実感しているようだ。

ベンチソファに座る井上家の3人の子どもたち

井上製作所のはじまり

木工作品を手に笑顔の井上ご夫妻

太佑さんは会社員として、智子さんはパートとして働くかたわら、井上製作所として木工製品を作り、販売している。「最初は星からだったよね」と智子さん。太佑さんに木製の星のオブジェを作って欲しいと頼んだのがキッカケだった。「買わなくても夫なら作れそうだと思って」と当時を思い返した。ちなみに、今でもこの最初に作った“星のオブジェ”は、井上家のリビングに大切に飾ってあるそうだ。その後、友人から同じ物を作って欲しいと頼まれたり、ガラス作家さんのディスプレイ装飾を作ったり、作品を通じて多くの人と出会うことができた。今も、週末や仕事が終わった時間を使って、自分たちのペースで木工作品を作っている。

モノづくりしやすい米原の環境

太佑さんは「ここじゃなかったら趣味で終わっていたかもしれない」と話す。大きな木材の加工は自宅の庭先で電動工具を使って作業をする太佑さん。普通なら騒音が近所迷惑にならないか気になるところだが、非常識な時間帯でない限り多少大きな音を出しても怒られないと言う。むしろ、ご近所さんたちが「今日は何を作ってるん?」と興味を持って話かけてくれるらしい。米原の人の大らかさや懐の深さこそ、モノづくりがしやすい環境そのものだと教えてくれた。とはいえ、米原の冬の寒さは厳しいので、室内で電動工具が使える自分だけのアトリエを持ちたいとも話してくれた。

井上製作所の木工作品たち

人のいぶきを感じる

詳しく説明してくれる智子さん

米原は、閉鎖的な田舎でもなく、都会でもなく、ちょうど良いバランス。都会で暮らしていた時は、街だけじゃなく、人も無機質で都会化しているように感じていたという。「こっちは暖かくなると、草刈り機をもったお父さんたちがあちこちにいて、畑をしたり、庭を整えたり、大抵のことなら自分で動くのが当たり前。決してきらびやかではないけれど、人の“いぶき”を感じる。それに、面白いのは市役所。向こうから声をかけてくれることに驚いた。だから、正直あんまり都会化してほしくない。人とのつながりやエネルギーを感じられるまちのままであってほしい」と話してくれた。「京都に住んでいた時は、駅まで送ってと頼まれるとちょっと気合いが必要だったけど、米原駅まで送ってと頼まれたら「よし!乗って!!」って言えるのよ」と智子さん。

安心して暮らせる米原市

「米原市の魅力はたくさんあるけど、やっぱり人の距離感が一番のおすすめポイントかな。無関心すぎず、近すぎず、あれこれ口出しをするわけでもなく、でも困っていたら絶対に声をかけて助けてくれるだろうっていう安心感がある。逆に近くの誰かが困っていたら自分たちが助けたいって思える」と智子さん。大雪の際、智子さんが自宅の駐車場に入れずに立ち往生していると、近所のご夫婦が揃ってスコップを持って助けに来てくれたという。そんな米原だからこそ仕事も、子育ても、井上製作所も続けてこられたよね、としみじみ話してくれた。

子どもたちに木工を教える太佑さん

ベンチソファに座る井上家の3人の子どもたち

井上製作所

概要
2010年京都より滋賀県米原市へ移住、夫婦と3人の子どもで暮らす。星形木製オブジェの他に寄せ木ヘアゴムやブローチなども作製。びわ湖の流木で作る木工品も。ずっと触っていたくなるような木のぬくもりを感じる木工品を、手に取りやすいお値段で。
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文/写真

びわ湖の素編集部

びわ湖の素編集部は、ディレクター/デザイナー/カメラマン/ライターなどで構成されるクリエイティブチーム。自分たちが楽しいと感じ、人に伝えたいと感じることを大切にして、米原の魅力を発見し、体験し、発信しています。また、一緒に編集してくれる仲間を随時募集しています。