山城真理さん

カフェ・ルミエでコーヒーを提供する山城さん

米原しかない!

カフェでインタビューを受ける山城さん

2020年4月、新型コロナウィルスが流行し、緊急事態宣言が出された当時、山城さんは大阪市内のホテルに勤務しながら心斎橋のマンションでポーセラーツの教室を開いていたが、休業を余儀なくされた。このことがきっかけとなり、これからの暮らしを見つめ直したという。そして、自分の中に自然豊かな環境で暮らすということを求めていることに気付く。移住先を検討し始めた結果、出てきた条件は、大阪に週2回通勤がある為、新快速と出来れば新幹線が停まる交通の便が良い事、京都の実家に車で1時間ほどで帰れる場所。それでいて自然豊かな土地だった。「色々調べていったら米原一択になりましたね」と山城さん。

この家がいい

外出が制限される中、調べていくうちにまいばら空き家対策研究会のサイトに辿り着いた。「サイトからはウエルカムな雰囲気が感じられ、実際に空き家に住まわれた方のその後の生活の様子が掲載されていてとても参考になりました」と山城さん。緊急事態宣言が解除された6月、まいばら空き家対策研究会を訪れ、空き家バンク登録と、気になっていた物件の内見に行くことに。サイトで見ていたお目当ての物件をみたあと、近くにあるという別の空き家を見せてもらったところ、玄関を入った瞬間「この家がいい!」と感じたという。「ご縁ですね。自分の中では結構あっさり希望の家が決まりましたね」と山城さん。

自宅でインタビューを受ける山城さん

自分らしいライフスタイルで

自宅でポーセラーツ教室をする山城さん

週2回の大阪への通勤は、ほとんどストレスがないという。「大阪市内に住んでいる同僚と比べても通勤にかかる時間はあまり変わらないことも。何なら米原は始発で必ず座れますし、新幹線は更に快適です!」と笑顔の山城さん。また、ポーセラーツの教室も米原の自宅で続けている。「大阪の心斎橋で教室をしていた時の生徒さんも、以前より少し時間とお金はかかりますがありがたいことに米原にも引き続き来てくれています。それに最近はご近所の長岡マダムもポーセラーツを習いに来てくれますよ」と山城さん。仕事と教室の合間には、動画サイトを参考にしながら見よう見まねで築50年の自宅を少しずつDIYしているとのこと。「自分の好きなようにできて、どんな風に家を作りあげていくか考えるのが楽しいですね」と話してくれた。

米原に住んでみていかがですか?

まず地域のコミュニティがすごく心地いいですね。ちゃんと人との繋がりが残りながらも、つかず離れずの距離感がとてもいいなと思います。いいんかな?って思うくらい本当に何もストレスを感じることなく暮らせています。近所の方がお味噌づくりに誘ってくれたり、ヨモギのお餅をつくる集まりに誘ってくれたり、ちょっと仲間に入れてもらっているみたいな感じで、とても嬉しいです。そう話す山城さんからは、自然体で地域に馴染もうとする姿勢がうかがえる。「びっくりしたのは獅子舞が家にくること。あんなんないですよね!なかなか来ないですよ!家に獅子舞は」という山城さんに、米原生まれ米原育ちのディレクターは「獅子舞は当然家に来るものだと思っていた」と、お互いに驚き、笑い合った。

近所のおばあちゃんに説明する山城さん

米原の魅力はなんですか?

山城さんがつくったポーセラーツ作品

「豊かな自然と昔ながらの街並みが残っているところ。彦根と長浜の間で素朴に残っている〝奇跡のまち〟だと思っています」と山城さん。必要なものはネットで買える時代、どうしても街でしか買えないものは、その時だけ行けばいい。と山城さんは考えている。それよりも、豊かな自然の中に、瓦の屋根が並ぶこの景色の方がずっと素敵だと話してくれた。「くねくねした路地、くねくねした天野川、私は大好きです。護岸工事された真っ直ぐな川じゃない。〝昔ながら〟がちゃんと残っている。そこに強く惹かれています。それなのに交通の便が良いって本当に奇跡のまちだと思います」と山城さんは言う。

カフェプロジェクトの始まり

約2年前、JR近江長岡駅のカフェプロジェクトが動き出した。移住して間もなく開かれた市職員と住民との交流会。まちの活性化にはどうすれば良いかという話題で、山城さんが「通勤する時に駅でおいしいコーヒーが飲めるようなカフェがあったら嬉しいな」と何気なく口にした。数か月後のある日、自治会長の吉川さんから「近江長岡駅の駅舎のスペースを借りられそうだよ。補助金も出るかもしれないから、山城さんやってみてくれないか?」と連絡があった。カフェで働いたこともなければ、事業経営したこともない山城さんだったが、自分の一言で周りの人が動いてくれたことに喜びを感じ「私で良かったらやってみよう」とスイッチが入った。

カフェ・ルミエのパース図

こだわりの「カフェ・ルミエ」

カフェ・ルミエの抹茶オレ

その道のプロがいない移住者と住民によるカフェプロジェクト。意見がぶつかりあうことも度々あったという。コーヒー1杯500円は高いんじゃないか?もうちょっと安くできないか?と指摘された時は、少し高くても、美味しくて身体に優しいオーガニックコーヒーであることの必要性を説明し、理解を求めた。「お子様からお年寄りの方まで、〝毎日でも食べに来て!〟って、胸を張って言える安心・安全なものを提供したいんです」と山城さん。スイーツは手づくりにこだわり、抹茶オレの抹茶も残留農薬ゼロの京都の料亭でも使われているものを選んだ。自分が譲れないと決めたところは、ときに絵を描いたり、時に資料を作ったりして、みんなに伝えたそうだ。そして、地域住民の協力のもと、こだわりの詰まった『カフェ・ルミエ』がオープンした。

ゆるい繋がりを取り戻すこと

今回取材をさせてもらい、その端々で山城さんからは地元住民への敬意を感じる言葉を聞くことができた。そんな山城さんが目指すのは「もともと住まわれている方にも心地よい活気」だという。「他所から来た人間や若い世代が、急にドカンって盛り上がるんじゃなくて、カフェ・ルミエを通してゆるく心地良い繋がりが少しずつ取り戻せるように賑わっていけばいいなって思っています」と山城さん。素朴に残るこの米原、近江長岡を愛する山城さんらしい希望だ。

コーヒーを淹れる山城さん

移住を考えている人へ

カフェでインタビューを受ける山城さん

せっかく新しい地域に移住するのだから、受け身じゃなくてね、1歩踏み込む気持ちが必要だと思います。いや、米原の人たちは優しいから半歩でも良いかな。とにかく、移住者は、地域の人に自分から馴染もうとする努力は少しは必要かなと。自分から積極的に地域の行事に参加してみるのもオススメです。そうするとね、地域の方たちとの繋がりもでき、こちらのことも少し知ってもらえる。これがとてもあったかくて、心地良い。昔からその地域に住まわれている方々の空気感やそのまちの慣わしを少しづつ感じて、無理せず自分らしく馴染んでいってもらえたらと思います。

カフェでインタビューを受ける山城さん

カフェ・ルミエ

概要
2024年2月JR近江長岡駅の待合室にオープンしたCafe Lumière(カフェ・ルミエ)。オーガニックコーヒーと手づくりスイーツがおすすめです。
びわ湖の素編集部のロゴ

文/写真

びわ湖の素編集部

びわ湖の素編集部は、ディレクター/デザイナー/カメラマン/ライターなどで構成されるクリエイティブチーム。自分たちが楽しいと感じ、人に伝えたいと感じることを大切にして、米原の魅力を発見し、体験し、発信しています。また、一緒に編集してくれる仲間を随時募集しています。